為替介入額の推定

為替介入額の推定等、分析実務を身に着けたい方には役に立つ内容ですが、そうでない方にとっては、あまり興味がないかもしれない情報です。
通貨介入が市場トピックスに浮上する際に、その介入による効果、把握方法を知りたい方は、以下、参考にしてください。

為替介入の種類:不胎化介入と非不胎化介入

政府(中央銀行)による外国為替市場への介入には「非不胎化介入」と「不胎化介入」があります。
非不胎化介入の場合、政府(中央銀行)の外貨保有増に応じてマネタリーベース(準備預金)が増加し、金利低下や、マネタリーサプライの増加が起こります。
それがさらに資本余剰、輸入増を通して外国通貨高・自国通貨安をもたらすメカニズムです。
一方、不胎化介入の場合には、マネタリーベース(準備預金)に変化がないため、マネーサプライに与える影響もありません。
したがって為替相場に与える影響も限定されるわけです。
介入時の政府のバランスシートの変化メカニズムを理解するために単純化したケースで、政府(中央銀行)・民間金融機関バランスシート上での 変化を整理します。

政府(中央銀行) 民間金融機関
外貨資産 +100 当座預金 +100 当座預金 +100 (外貨売却) -100

(見方)100の外貨買いを実施し、外貨余剰となったものの、特段の吸収オペレーションを実施せずに日銀当座預金に放置しています。

政府(中央銀行) 民間金融機関
外貨資産 +100
T-Bill -100
当座預金 ±0 当座預金 ±0
T-Bill +100
(外貨売却) -100

(見方)100の外貨買いを実施すると同時に、資金吸収オペレーションとして、T-Billを100購入しています。

介入額の推計

為替介入額と、その不胎化のための金融調節額は日銀の公表する「日銀当座預金増減要因と金融調節」(毎営業日更新)によって推計することができます。
毎日の取引終了後に「当日の実績速報」と「翌日の予想」がホームページ(http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu.htm)に掲載されています。
実際にあったデータを基に、政府の円売り介入額を推計してみると以下の通りです。

11月2日 11月1日
銀行券要因 ▲1,200 +2,100
財政等要因 +76,800 +4,500
資金過不足 +75,600 +6,600
金融調節合計 0 ▲6,600
当座預金増減 +75,600 0

1 銀行券要因
対市中の銀行券の収支が計上される項目。市中の個人や法人の銀行券に対する需要に応じ、市中銀行は日本銀行における自行の当座預金口座において銀行券の引き出しや預け入れなどを行う。この行動により当座預金が増減し資金需給の要因となる。
 
2 財政等要因
対国庫の財政資金の収支(市中と国とのお金の受け払い)が計上される項目。 また、実際の為替介入額のヒストリカルデータは、財務省により日時データは四半期ごとに、毎月データは毎月更新される。

11月2日の日銀当座預金増減要因と金融調節抜粋からは、政府・日本銀行が先月31日に外国為替市場で実施した円売り・ドル買い介入額は、過去最大の8兆円規模に達したことが推計されます。
<推計の仕方> まず、為替相場のスポット取引日は、2営業日後となるため、10月31日の介入額を総計するためには11月2日の日銀当座預金増減要因と金融調節を用いる必要があります。
31日の介入額が反映される「財政等要因」が介入前の市場予想と比較した上振れ見込み額から推計されます。 
財政等要因は7兆6800億円程度の資金余剰であるが、事前予想(※)は3000億円の資金不足となる見込みであったため、一日の1日の介入額としては過去最大となる約8兆円規模であったことがう窺えます。(※:介入実施前の資金過不足予想は東京短資が出しています[https://www.tokyotanshi.co.jp/market_report/index.html])
また、金融調節がゼロであったため、一切の吸収オペレーションを伴わない非不胎化介入であったことがわかります。

【留意点】
不胎化介入は為替やマネーサプライへの影響を抑える一方で、国債市場(金利や需給)に対しては一定の負荷や影響を与える可能性があります。 円売り介入を行う際、政府は元手となる円資金を調達するために政府短期証券などを発行します。

  • 非不胎化の場合: 調達した円を市場に放出したままにするため、日銀当座預金が増加し、マネタリーベースが拡大します。
  • 不胎化の場合: 市場に放出した円を「回収」する必要があります。具体的には、日銀や政府が保有する債券(T-Billなど)を民間金融機関に売却し、代わりに円を吸い上げます。

このとき、市場には「大量の国債(短期証券)」が供給されることになります。買い手である民間金融機関からすれば、急激に国債の供給が増えるため、需給が緩み、国債価格の下落(=金利の上昇)を招く要因となります。

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