重要なのに理解されていないフィキシング取引(為替市場)


フィキシング取引とは

フィキシング(値決め)取引は、指定された時間の公表レートを銀行が保証し約定する取引のことです。

個人投資家の間ではロンフィクの愛称が使われることが多いようです。(ロンドンの銀行員は4PMオーダーと呼んでいます。)

為替トレーダーにとって、フィキシング(値決め)取引ほど重要なイベントはないのですが、個人トレーダーに重要性がそれほど浸透していないように思います。

なので、この記事ではフィキシング取引の重要性を説明します。

大口の実需フロー

外国為替市場ではポートフォリオのリバランスや、買収案件に絡んだオーダーが多いです。

いわゆる、実需の売買になるのですが、これは、株式市場や金利市場には無い、為替市場独特のものだと思います。

中でもロンドン午後4時にWM/Reuters 社から公示されるロンドンフィキシングは、為替市場において最も重要なフィキシングとされます。

なぜなら、アセットマネジメント系のポートフォリオリバランス等、アセットに絡む、巨額の売買はロンドンフィキングを使うことが慣習となっているからです。

逆に、アセット以外の事業法人の経常為替フローが、ロンドンフィキシングで捌かれることは稀です。ココが東京仲値と大きく違う点です。

この時間は、アセットに絡む大口の取引で、為替相場の変動が非常に激しくなります。

取引が集中するロンドンの各銀行は数千本単位の取引をロンドン4時に捌くことになります。

実需のフローが大量に売買されるため、ファンダメンタルズとは関係のない値動きが繰り広げられます。

バブル崩壊のイラスト

思惑が相場を作る

ロンドンフィキシングを前に、市場では様々な思惑が浮上し、相場を動かします。

インターバンクのカバー自体は、殆どの銀行がTWAPアルゴ(前後2分30秒、合計5分)等で執行するので、実弾がでるのは限られた時間内となるはずですが、思惑が相場を作るためロンドン午後に入ると方向感がつくことが大半です。

よって、相場の雰囲気をつかむことが非常に重要な材料となります。

ロンドンフィキシングで、まず重要なのはポートフォリオのリバランス目的の取引玉です。

リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、相場変動などで変化した投資配分比率を見直し、値上がりした資産を売り、値下がりをした資産を買い増す、などによって、ポートフォリオの構成を最初と同じ比率に修正していく手法のことです。

よって、市場参加者は、各国の株式市場や債券市場の一か月間の値動きを確認し、ロンドン4時に発生するであろうフローを予想し、それぞれの分析をもとにベットします。

ただし、ロンドンフィキシングは、分析通りに事が進まないことでも、よく知られています。

なぜなら、ロンドンフィキシングが、アセットに絡む大口取引利用されるということ=リバランス以外の大口アセット関連玉、つまり買収玉等を捌くための為替基準価格として使用されることもあるからです。

実際に取引されるフローは内部情報であるため知りえないのですが、インターバンク市場では、どこからか「どうやら4 時は買いらしいぞ」や、「買収に絡む取引が本日の4 時で出るらしい」等、思惑が浮上します。

これらは根も葉もないうわさであることもあるので、惑わされないことが重要です。

こういった思惑が市場を形成するため、ロンドン時間4時は、その前後だけでなく、4 時に向けて、数時間前からじりじりと相場が形成されます。
うわさを話す人のイラスト

噂で買って、事実で売る

ロンドン4時フィキシングは「噂で買って、事実で売る」動きにもなりやすいので要注意です。

例えば、2014 年2 月21 日のロンドン4 時フィキシングでは、米通信会社が英通信会社保有株式を買収するポンド買いドル売りフローが出るのではという噂が流れました。

1,300 億ドル(カタールのGDP に相当)の大型案件であったため、市場の注目は非常に大きかったです。

当然、ポンド買いの思惑が燻る中、4 時フィキシングに向けポンドはじりじり買われ1.6640 レベルから1.6720 レベルまで上伸しました。

しかし、噂で買われ、事実で売る動きから、実際の4 時近辺の値動きは利食い一色となり、ポンド売りドル買いとなったのです。

情報が入らないので触らないこと

情報は取引を担当する当事者が漏らすはずもないので真相はいつも闇の中です。

特に、複数のトレーダーがフィキシング操作に関与したとされるカルテルチャット問題を機に、トレーダー間でもフィキシングに関する情報共有の一切はストップされています。

収益と引き換えに解雇、刑事罰をくらうのは割に合いません。

というか、フィキシング決済を人間が担当する時代は、とうの昔に終わっています。

現代のフィキシング業務は、想像以上に無機質なものです。

にもかかわらず、市場ではドラマチックなストーリーをイメージさせる情報が錯そうすることが多々あります。

当然、真偽は定かではありません。

よって、個人投資家が為替相場で取引する際には、月末のロンドン4時近辺は避けた方が無難かもしれません。

スパイのイラスト(女性)

(参考)為替相場で有名な主なフィキシングオーダー

• 東京フィキシング東京9:55 頃
• 東京カットオプション東京15:00
• ECB フィキシングロンドン15:00 頃(夏東京23:00 冬東京24:00)
• NY カットオプションニューヨーク10:00(夏東京23:00、冬東京0:00)
• ロンドンフィキシングロンドン16:00 頃(夏東京0:00 冬東京1:00

(参考)ロンドン4時フィキシングの別称

  • 4時オーダー
  • 4時フィックス
  • WMRオーダー
  • 4PM オーダー
  • ロンフィク
等、様々な呼ばれ方をしますが、どれもロンドン4時フィキシングを指します。

👉時間のある方はビジネスロンフィク記事についてもご覧ください。



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