為替介入の物理的制約 円安介入の限界と構造的要因 2025年11月、円相場は再び1ドル157円台という危険水域に突入している。 片山さつき財務大臣は「介入も当然考えられる」と市場を牽制したが、相場の反応は限定的である。 介入には構造的な限界があることを、市場がすでに織り込んでいるためだとも言える。 以下、為替介入が構造的に抱える制約を考察する。 1. 規模の限界:コップの水 vs 大河の流れ 為替介入を論じる際、まず直視すべきは市場規模と介入原資の圧倒的な非対称性である。 市場の規模 国際決済銀行(BIS)の2022年調査によれば、世界の外国為替市場の1日あたりの平均取引高は約7.5兆ドル(約1,150兆円)に達する。 このうち円が関与する取引は約1.25兆ドル/日(約190兆円/日)である。 日本の「弾薬」 一方、日本が介入に使える外貨準備高は、2025年12月末時点で約1兆3,698億ドルである。(約200兆円) 一見すると巨額だが、その内訳は以下の通りだ。 証券(米国債等):約1兆37億ドル(約73.4%)※外貨準備の主要部分 預金(現金/中央銀行・BIS等への預金):約1,604億ドル(約11.6%) その他(IMF準備順位、SDR、金・その他の準備資産):残り(IMF 112.6億ドル、SDR 608.4億ドル、金 1,171.7億ドル、その他 163.1億ドル) 財務省:外貨準備等の状況 即座に介入原資として活用可能なのは、原則として「預金」の約1,604億ドル(約25兆円)である。 証券については、2022年および2024年の介入時に米国債を売却してドルを調達した実績があるが、 大規模な売却は米国債市場への影響や米国との政治的関係を考慮せざるを得ない。 数字が示す現実 過去最大級の介入である2024年4〜5月の円買い介入は、約9.8兆円(約650億ドル)であった。 これを円市場の1日分の取引量(約1.25兆ドル)と比較すると、わずか5%程度にすぎない。 巨大な市場の奔流に対して、日本が投入できる資金は「バケツ数杯の水」程度である。 一時的な攪乱にはなっても、水流の逆転には至らない──これが現実である。 ...
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