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Brexit.xlsm ~「最終セルの直書き」からの循環参照・計算不能~

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Brexit型国民投票は制度設計上のバグか? このコラムの読了目安は10分ほどです。内容は(しつこく)ブレグジットです。国民投票について考えると、#VALUE! や循環参照 が頭に浮かぶのです。そうした違和感を『Brexit.xlsm』として出力した批評的な読み物です。お時間のある方は、「なぜBrexitで英国がこれほどグダグダになったのか」英国ワールドを覗いていってください。 国民投票のバグ 2016年のBrexit国民投票から、すでにかなりの時間がたった。それでもロンドンで政治の話題になると、「あの国民投票は結局なんだったのか」という問いが、いまでもふっと顔を出す場面は少なくない。とりわけ印象的なのは、当の本人であるDavid Cameron自身が、のちにBrexitを “a mistake” と評し、さらに “we have taken the wrong course” と「誤った道を選んだ」と振り返っている点だ。 ただし、そこでは結果への評価は語られても、民意が確定したその後に、制度設計そのもののどこに問題があったのかまでは、具体的に掘り下げられることは少ない。そのため、「では何がどこで間違っていたのか」という中身になると、議論は途端にぼやけてしまう。 公の場では、「国民の意思が直接示された」と整理する他ない。一方で、その後に続いた長い交渉と混乱を振り返ると、実態としては「そもそもあの問い方や設計そのものに、どこか構造的な欠陥があったのではないか」という感覚を抱く人も多い。まずは、そのとき有権者の考えがどのように揺れ動いていたのかを、簡単に振り返ってみたい。 (図:Brexit世論調査の推移) グラフを見ると分かるように、Brexitをめぐる世論は投票前後で一方向に固まっていたわけではない。むしろ、Leaveが優勢になった期間はむしろ短く、その「ごく短い瞬間のスナップショット」が、二者択一の仕組みのなかでそのまま永続的な結論として固定された、という構図が浮かび上がる。 これは...

ファンダメンタルズから乖離という言い訳

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本稿は実証分析ではなく、市場における言葉の働きとその解釈のズレを題材にしたコラムです。事実関係の整理には配慮していますが、あくまで思想的・批評的な読み物としてお読みください。 市場文学 通貨売り局面で、政府が「現在の為替レートはファンダメンタルズと乖離している」と言い始めた時、 それは本当に市場の行き過ぎを正すシグナルになっているのか。それとも、政策当局が 現実を直視することをやめたサインなのか。 本稿では、いくつかの歴史的事例を振り返りながら、「乖離」というフレーミングがどのように受け止められてきたのか、またその言葉が用いられた局面で市場がどのような反応を示してきたのかを、整理していく。 1. 「ファンダメンタルズと乖離している」とはどんな言い訳か 通貨危機局面でよく聞かれるフレーズに、 「現在の為替レートはファンダメンタルズと乖離している」 というものがある。一見もっともらしいが、この言い方にはいくつかの前提が埋め込まれている。 為替レートには「本来あるべき水準」がどこかに存在する。 その水準は政府や当局が把握しており、現在の市場価格はそれから外れている。 したがって、現在のレートは「市場の誤り」や「投機の行き過ぎ」であり、我々の政策の問題ではない。 しかし、実際の為替レートは次のような複数の要因の総合結果として決まっている。 金利差や期待インフレ 経常収支・対外純資産 対外・対内投資フロー、ポジション構造 財政の持続可能性や政治リスク 信用スプレッド、金融システムへの信認 短期的な需給・フロー(HF、CTA、機関投資家など) これらをすべて織り込んだ結果として「いまのレート」が出ている以上、 当局が気に入ろうと気に入るまいと、それは一種の均衡点である。 にもかかわらず、「乖離」という一言で片付けてしまうと、その背後にある 金利政策・財政運営・資本フロー構造などの議論が一気に消えてしまう。 ...

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