最近、金利が動くとドル円もやたら動くけど…なんで?
ドル円市場への金利の影響が強くなった
- 今年に入ってドル円と金利の相関関係が近年稀にみるレベルで強まっている
- 2021年1月1日~5月17日の日時データの単回帰分析をみると決定係数は0.947
- 決定係数はデータに対する、推定された回帰式の当てはまりの良さ(度合い)を表し、1に近いほど、回帰式が実際のデータに当てはまっていることを示唆する
ドル円(Y軸)と米10年金利(X軸)
出所:ブルームバーグ
ドル円の基礎的需給の整理
- ドル円の金利への相関が異常に強いのは基礎的需給(貿易収支)が殆どフラットで、資産取引(利回り)くらいしか決定要因がなくなったことが背景にありそう
- コロナ危機の最悪期を脱し、企業活動が正常化(輸出が復調)→貿易収支が均衡に戻ったことで為替の基礎的需給がフラット化した
- 日本銀行が公表した1~4月合計のドル円スポット取引高も874億ドルと著しく小さかった(過去5年平均1654億ドル、過去10年平均1845億ドル、過去20年平均1940 億ドル)→為替需給が均衡してるので取引の必要がなくなった
- 昔に比べて東京仲値でそんなに動かなくなったのも貿易収支に傾きがなくなったイメージと合致
貿易収支(棒グラフ)と移動12か月線(ピンク)
出所:ブルームバーグ
フローアプローチ、なぜ貿易収支を移動平均線でみるのか?
- 貿易収支は発生主義に基づく統計であるため為替フローが出るまでタイムラグがある
- 多国籍事業法人は纏まった期間のキャッシュフロー見込み額に対し為替予約でヘッジ比率を調整するため企業活動にかかる需給の為替への影響は単月ではなく移動平均で見るのが適当
- ヘッジ期間は向こう数カ月~数年とばらけるので一先ず1年平均で見ておく
アセットアプローチ
- 需給のゆがみがない分、為替レート決定要因にフローアプローチが寄与する余地が少なく、アセットアプローチ(金利≒対外証券投資動向)が効きやすくなった
- 対外証券投資のに注目すると第一四半期は本邦機関投資家の中長期債の買い越しが目立った( 1~4 月合計で約+2.6 兆円)
- 日米金利差拡大を意識した本邦機関投資家のドル買い意欲は年初から大きいとみえる
- 為替は需給が命というが、事業法人の需給にゆがみがない中、金利を前提に為替動向を探る伝統的アプローチを主眼にポジションを構築した方がよさそう
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