為替トレーダーのための現代ファイナンス
~大統領選挙スペシャル~
為替トレーダーのための現代ファイナンス
大統領選挙のように大きなイベントの後にはドルや株式市場の方向感がつきやすいものです。
トレーダーなら、動意づく相場では、ポジションを持っておきたいですが、何の通貨ペア(インデックス)を持っておくべきか悩むところです。
しかも、イベント相場の難しいところは、チャートを眺めていても結論が出ないところです。
(チャートが得意な人ほど、難しい相場かも・・・)
大統領交代のように、大々的な政策変更が見込まれる局面では、ファンダメンタルズが主因となり、短期のテクニカルは通用しないと考えた方がいいかもしれません。
かといって、ファンダメンタルズ分析を各通貨ペア毎に実施した上で、ポジションを取るとなると時間もかかってしまうので、機を逸してしまうリスクがあります。
うーん、何かいい案はないものでしょうか・・・
特別、思い入れのある通貨(相場感)があれば別ですが、そうでない場合は、いったん短期の上下動から離れて考えてみてはどうでしょうか?
政局等の地殻変動がある場合には、中長期的な観点に立ち返る必要があります。
チャートのジグザグではなく、ポートフォリオ理論を参考に中長期的なポジション構成を考えてみるのも手です。
ポートフォリオ理論の効率的フロンティア分析によって、複数の通貨やインデックス等、値動きの異なるものを組み合わせれば、ポートフォリオ全体として、ブレを相殺(リスクを軽減)させて、効率的に収益化することも可能です。(ポートフォリオ効果)
本欄では、誰でもわかるを目標にポートフォリオ理論に基づいたポジション構成手法をまとめます。
効率的フロンティアとは?
効率的フロンティアとは、ポートフォリオにおける資産配分の中で、投資家にとって最も有利な選択肢の集合です。
この、ポートフォリオ理論を理解するには、分散投資の意義を言い表す米国の格言「Don't put all your eggs in one basket(すべての卵を一つのカゴに盛るな)」をイメージすればわかりやすいと思います。
卵をいくつかのカゴに分散することでリスクが軽減できるように、複数の通貨・インデックスに分散すると、ポートフォリオのリスク(変動)も軽減できます。
しかも、単純に個別の通貨、インデックスのばらつきを足し合わせるわけではなく、ポートフォリオ効果で一段と変動を抑えることができます。
現代ファイナンスでは、幾つもの通貨、インデックスを組み合わせたポートフォリオの収益は平均化され、リスク(変動)は小さくなることが分かっています。
資産運用の際、多種類の資産(市場)を組み合わせることで、小さいリスクで高い収益を狙うことができる、との考え方です。
リターン・リスク効率ってどう見るの?
シャープ・レシオが一般的です。
この指標は米国の経済学者のウィリアム・シャープ氏が考案したことから、その名がつきました。
投資のリスク(価格変動)の大きさに比べてどれだけリターン(収益率)を得られるか、運用効率の高さを示します。
計算方法は、過去の投資のリターンを国債利回り(リスクフリーレート)を引いたうえで、リスク(標準偏差)で割ります。
ただし、今は超低金利が続いているため、投資のリターンをリスクで割って求めたものと簡略化して考えればいいと思います。
早速、例えをつかって、理解してみましょう。
例)シャープ・レシオを用いた投資判断
外貨投資A:リスクが10%でリターンが5%
外貨投資B:リスクが25%でリターンが10%
一見、リターンの高い投資Bの方が優位に見えますが、リスクも高くなっています。
2つシャープレシオを比較すると、
外貨投資A:0.5
外貨投資B:0.4
となり、外貨投資Aを選んだ方が効率がいいと言えます。
最適株式ポートフォリオ
前置きが長くなりましたが、実際の過去のデータをもとに、最適な資産構成はどのようなものか、分析してみましょう。
ポートフォリオ運用において、一般に資産をどのくらい組み入れるかといった資産配分比率(アセットアロケーション)が運用効果を決定する重要な要素とされています。
ここでは、日、英、欧、米の6インデックスの構成比率をいじることで、最もシャープレシオが高くなる組み合わせを探したいと思います。
株インデックス(Normalization:100、ドル建て)
グラフの通り、10年間のリターンで見たところ、ナスダックが最も収益性が高そうに見えます。
ただし、相応に振れ幅も大きそうです。
シャープレシオの基本はリスクを抑えて、リターンを狙うことなので、他の資産との組み合わせで振れ幅を抑えて、最適ポートフォリオを作ることができないものが計算してみます。
効率的フロンティア
効率的フロンティアをプロットしてみたところ、ナスダック:69%、日経225:31%の組み合わせが、シャープレシオ14.99と最も効率的であることが示されました。
つまり、分析結果からは、ハイテク株と日本株の組み合わせに投資していくことが望ましいポートフォリオであると結論づけることができます。
最適通貨ポートフォリオ
同様に、為替ポジションのポートフォリオを考えます。
今回は、大統領選後のドル高に備えることを目的に、どの通貨ペアでドルロングをとることが効率的かを探したいと思います。
まず、以下のとおり、10年分のドルストレート通貨(USD/GBP、USD/EUR、USD/JPY、USD/AUD、USD/NZD、USD/CNH)をグラフにしました。
ドル vs 他通貨(Normalization:100)
ざっと見たところ、大統領選(2012年、2016年)後はドル買い相場となったことがわかります。
それでは、効率的フロンティアをプロットします。
効率的フロンティア
対ドルで売るなら、ポンド25%、円45%、豪ドル30%が、最もシャープレシオが高くなる組み合わせのようです。
計算ツールは?
最適ポートフォリオの算出は、エクセルや統計用プログラミング(R・Stata・Python)を使って計算することが一般的です。
定量分析は、一度、自身で作りこんでみてノウハウを蓄積していくことが重要です。
なんか面倒くさそう
わかりまぁーーっす!
趣味でやってる投資だったり、時間的制約がある方は、手を煩わせたくないものです。
なので(最善ではないですが)、面倒だと感じた方は、そういう情報を発信してる人を探せばいいと思います。
筆者もそれほど界隈に詳しくありませんが、ソーシャル・メディア上では、この辺の情報を分析してる、金融系のツイッタラーやブロガーがチラホラいます。
うまくいけば、自分の手を煩わせず、情報だけ見ることができます。
誰をフォローすればいいの?
はい✋(笑)
ひとまず、このツイッターアカウント、オススメデスヨ(棒
補足
本欄は、トレーディングに何からの参考になればいいな、と長々と書き綴りましたが、一応、補足しておきます。
当たり前ですが、過去のデータが確実に将来を指し示すわけではありません。
分析結果を参考に投資判断を決めるのはトレーダー自身である必要があります。
結局のところ、様々な分析は勝率を高めるためのツールでしかないのです。
役に立つ情報は何か、取捨選択していく作業こそがトレーディングの醍醐味だと思います。
以上、ご参考まで!
注)本欄は効率的フロンティアを単純化し解説しました。運用の現場ではリスク量をより動的に測るため、DCC-GARCH等、リスク予想モデルを組み入れる等、モデルの工夫がなされています。
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