相場と景気のサイクル、大損失を避けるために投資家が知っておくこと

相場は山あり谷あり

相場は変動し続けるものです。

物理法則を見ても、永遠に存在するモノは存在しませんし、永遠に動かないチャートは存在しません。

万物には、始まりがあり、終わりがあります。全てのものが終わりに向かって進んでいるように、相場も、時間経過とともに波打ち、変動していくことが宿命です。

経済学的には、相場の変動は、各国間のインフレ格差や生産性格差などの実態を反映した均衡点を目指すために必要な現象であると理解されています。
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固定相場

例えば、以前の中国のように固定相場制を適用した場合にはどうでしょうか?

または、ユーロ圏のように域内のユーロに統一することによって、為替変動を失くせばどうですか?

もちろん、固定相場を適用したり、統一通貨を導入すれば、相場の変動をゼロにすることができます。

しかし、相場の固定化は、非常に人為的な政策なので、自国経済に不都合が生じます。

具体的には、為替相場を固定するには、「自由な資本移動」か、「自由な金融政策」のいずれかを手放さなければなりません

クロスボーダーの資本移動が自由化されたなかで、ある国が金融の引締めを行い金利が上昇すれば、その国へと資本が際限なく移動するため、固定為替相場制は崩壊してしまいます。

それを防ぐためには、国際資本取引を規制するか、相手の国に追随し、同じ金融政策をとる(自由な金融政策の放棄)以外にありえません。

自由な金融政策と固定相場制のために、自由な資本移動をあきらめていたのが中国で、ユーロ圏内の国は、統一通貨(固定相場制)を実現するために、域内金融政策は欧州中央銀行に一任し、自由な金融政策をあきらめています。

どう頑張っても、資本、金融、為替のすべてをコントロールすることは不可能なのです。

相場の変動を許容せざるを得ないのが、経済学的な摂理です。

このような理論を国際金融のトリレンマといいます。

金融庁のイラスト

相場変動の波を予測することは可能か?

相場を読み解くには、過去の値動きからトレンドを理解する大局観が必要です。

ここでは、長期の景気サイクルの波等について紹介します。

代表的なもので、「短期、中期、長期、超長期」のそれぞれの周期で循環すると考える手法があります。

  •  コンドラチェフ(技術革新サイクル)→超長期サイクル:50〜60年
  •  クグネッツ(建築投資サイクル)→長期サイクル:20年
  •  ジュグラー(設備投資サイクル)→中期サイクル:10年
  •  キチン(在庫投資サイクル)→短期サイクル:40ヶ月
ローソクチャートのイラスト

超長期サイクル:コンドラチェフの波

この波は、第2 次世界大戦に勝利したアメリカを中心にスタートしたパクス・アメリカーナの時代と重なります。

東西冷戦を経て、半世紀にわたる自由主義経済を謳歌する国際秩序を作ってきました。

超長期サイクルの前半は、自動車を中心とした大量生産および消費を背景に経済成長を実現し、後半は東西冷戦後の国際社会で金融経済が活発化し好景気が実現されました。

アメリカの経済覇権は、浮き沈みを繰り返すも、結局、双璧をなす国も現れなかったため、20世紀には、パクス・アメリカーナがこれからも、盤石に続いていくものと思われていました。

玉座のイラスト

しかし、2000年代に入り、情報革命により超グローバリゼーションが加速したことで、アメリカの相対的優位性が失われる時代に入りました。

これは、コンドラチェフ(技術革新サイクル)の波の50~60年の周期と重なり、パスク・アメリカーナの終焉は、コンドラチェフの波からも説明が可能です。

パスク・アメリカーナ終焉の象徴として、アメリカは、2008 年に大不況を経験しました。

世界はアメリカの脆弱さを目の当たりとすることとなり、当のアメリカも「世界の警察をやめる(まるで覇権の終焉を宣言)」とのスタンスに変わりました。

国際経済は、アメリカが唯一の超大国として君臨する状況に終止符を打つことで、次のステージに進もうとしているのかもしれません。

その調整として、金融市場が、大きな地殻変動を示現したと考えることができます。

長期サイクル:クグネッツの波

この波は、一般的に建設投資を原因とする景気循環と理解されます。

建設物の需要が約20年で一周することをクズネッツ氏が発見したことから、20年と定義されています。

また、20年というのは人間が生まれて成人するまでの年齢とも重なるため、人口変動の周期も影響を及ぼしています。
成長期のイラスト

中期サイクル:ジュグラーの波

リーマンショックとコロナ危機を経験した現代人にとっては、この波が一番しっくりくるのではないでしょうか。

一般的に、ジュグラーの波は設備投資を原因とする景気循環とされ、およそ10年を周期としています。

リーマンショックの後、世界経済は約10年にわたって、成長を経験しましたが、コロナ感染拡大をトリガーに調整されました。

このコロナ危機については、味方は分かれますが、景気後退を説明する上で、単なるトリガーでしかなかったとの考え方があります。

実は、コロナ危機の前から、いくつかの国は景気後退に陥っていたことから、感染拡大がなかったとしても、2020年には経済拡大サイクルは終焉を迎えていたとの見方があります。

粉飾決算のイラスト

短期サイクル:キチンの波

この波は、企業の在庫の変動によって生じるサイクルだといわれています。

キチンの波は1~2年程度が一つの周期で、商品の流行等によって影響を受けるサイクルだと考えられます。

例えば、好況期でモノがよく売れるときには、小売店は大量に商品を仕入れ、品切れを起こさないように在庫に商品を保管します。

しかし、景気が後退の局面に入り、売れ行きが不調になると、仕入れを減らすことで在庫の商品を減らします。

小売店が仕入れを減らしてしまうと、商品の製造元であるメーカーの売り上げも下がることになります。

メーカーの売り上げが下がると労働者の賃金も低下し、経済の勢いは衰えます。このように、在庫の変動が景気循環を形成するというのがキチンの波です。

大変そうな棚卸しのイラスト(女性)

結論

こういった中長期の経済サイクルは、二桁パーセントの大相場を作りやすいので、損失を拡大させてしまうリスクがあります。

トレーダーとして生き残るためには、足元のチャートだけに踊らされるのではなく、定期的に中長期的な経済の波を再確認、足元の経済環境が、どの位置にいるのか、アップデートし続けることが必要です。

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