ポンド・クライシスに学ぶポジショントークの重要性
為替の需給を読むためのポジショントーク
ポジショントークは、いわゆる市場に浮上する大口取引の噂話のことです。
海外買収案件等では、数十億ドルにも渡るフローが一日に出ることもあるので、こういった流れに逆らい収益を上げることは、個人投資家にとって至難の業です。
したがって、大口フローの噂を聞きつければ、その流れに逆らわないことが賢明な判断であると言えます。
(ただし、プロのディーラー等から始まるポジショントークのなかには、自身のポジションを有利にしたい情報のみを流すような場合もあり、注意すべきだとも見方もあります。客観性にかける場合等、情報の良し悪しを判断しましょう。)

ポジショントークの重要性を学ぶために、過去の例「ポンド・クライシス」を紹介します。
ポンド・クライシスとは
ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)とも呼ばれる1992 年に発生したポンド急落の騒動。
ヘッジファンドの大口取引によりポンド売りが仕掛けられた相場の乱高下です。

当時、EU の前身であるEC(欧州共同体)では域内通貨を統合(ユーロに統合)するため、域内通貨間の為替レートを固定する制度を企図していました。
しかし、ユーロ導入に関しては、当時の欧州で随一の経済力を持ったドイツの通貨であるマルクを基準にして通貨統合を進めることが基本戦略であったため、国によってはユーロ導入(金融政策の固定化)によってダメージを受けてしまうリスクがありました。
特に、英国は、自国にインフレ体質があり景気低迷懸念があったので、好況であったドイツの金融政策に合せる行為は、経済学的には、いびつな政策運営であったと言えます。
国内でも、統合のために恣意的に価格設定(過大評価)されたポンドは英国経済に悪影響を与えるのではないかと懸念が強かったようです。
独自の金融政策が打ち出せないことは、高インフレ体質の英国にとって致命傷となりかねません。
そこに目を付けていたのが、ヘッジファンド「クォンタム・ファンド」率いていたジョージ・ソロスです。
ソロスは、「外貨準備通貨統合することができなくなってしまうが、英経済の現状からはポンドは売られるべきである。」と考えていました。
そこで、ソロスは、英国の経済規模に対して、財貨準備金が少なかったことに目をつけます。
外貨準備金が底をつけば英ポンドは英金融当局もそれ以上ポンド外防衛をすることができず、両手を上げるしかなくなると考えたのです。
そこで、ソロスは、大胆にも、国家に対して大口のポンド売りを仕掛けました。

ソロス単独では太刀打ちもできない相手でしたが、マーケットは、ポジショントークによって、大口の売りフローに加勢するだろう、と読んだのです。
当然、英当局も為替介入で防衛しましたが、市場ではポジショントークが一気に広まり、ムヴメントフォロワーがジョージ・ソロスのポンド売りに加勢していきました。
結果、英中銀は約3 兆円分の外貨が枯渇し介入を断念する事態となりました。
政策金利も一日で10%から15%まで引き上げたものの、英ポンド売りは止まりませんでした。

ポジショントークなしで生き残れる?
ポジショントークを知らずに取引することは信号無視して渋谷交差点を歩くがごとく行為です。
こういったポジショントークを知らずして、ポンド相場に参加していた投資家は巨額の損失を被ったはずです。

当時、ジョージ・ソロスが大口取引を仕掛けているときに、値頃感からポンド買いして、ブラック・ウェンズデーの餌食になった、なんて武勇伝は、黒歴史にしかなりません。
忘れられないトラウマを作りたくない投資家の方は、市場参加者の動向に注意を払うようにしましょう。
(ちなみに、巨万の富を一日で生み出したジョージ・ソロス、この日をホワイト・ウェンズデーと呼んでいるとか。)
結論
為替市場によって、参加者のフローの向きを見ずに取引することは、非常に危険です。
インターネット、ソーシャルメディアが発達した、現代の為替市場においては、様々な市場専門家の情報に個人レベルでもアクセスできるようになりました。
「相場を形成するのはインターバンクディーラーだけだ」なんて見方は、昔話です。
為替市場は、世界で最も大きな流動性を有する、巨大市場です。
市場分析、意見を交換するプラットフォームの数も莫大です。
経済学のテキストだけではなく、市場の生の声に耳を傾け、市場の動向を日々、アップデートすること努力を惜しまないことが、投資活動を継続する上で、最も重要なファクターであるといえます。

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