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LiborとSOFR、€STR、SONIAの違い

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2021年12月31日以降、ICE Benchmark Administration(IBA)は、米ドル以外のLIBORレートと一部の米ドルLIBORレートの公表を停止し、2023年6月末には、米ドル建てLIBORの算出に使用される情報を銀行が提出する必要がなくなる。その結果、金融機関は、2021年末までにLIBORを使用した新規商品の販売をストップする。LIBORの廃止に伴い、業界ではその代替としてSOFR(Secured Overnight Financing Rate)の導入が検討されている。 SOFRとは 米ドルLIBORに代わるリファレンス・レートはいくつかあるが、SOFRは米ドルLIBORに代わる最有力候補である。SOFRは、LIBOR移行を指導している米業界団体であるAlternative Reference Rates Committee (ARRC)が公式に推奨しているものである。 出所: LIBOR vs SOFR - Financial Resources | Pensford SOFRとLIBORの主な違いは、レートの生成方法にある。 LIBORがパネルバンクの報告情報(気配値) に基づいているのに対し、 SOFRはレポ取引市場に米財務省証券を担保とした現金のオーバーナイト借入コストを幅広く測定 しています。SOFRの基礎となる取引量は、定期的に1日あたり約1兆ドルで、ARRCは、SOFRが様々な市場環境において信頼できるもので、LIBORに代わる長期的な選択肢としてふさわしいと考えられている。 出所: LIBOR to SOFR Transition (capitalone.com) レートの正確性 LIBORとは異なり、SOFRは実際の取引、すなわち、レポ市場におけるオーバーナイト取引に基づいている。したがって、SOFRは、実社会における調達コストを測定するより正確な手段といえる。また、これらの取引は誰でも閲覧可能なデータであるため、操作されにくいという特徴もある。 SOFRの算出方法 ニューヨーク連銀が米国財務省証券を担保としたレポ契約の3市場における取引量加重中央値(50パーセンタイル)を取ることでSOFRを算出し、毎日午前8時(EST)に発表する。 SOFRの実務的課題 市場ベースのリスクフリーレート(RFR)に移行することには明ら

銀行勘定金利リスク管理(IRRBB)ざっくり整理

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長年にわたる低金利政策によって、欧州各行の収益機会がかなり低迷している。特に、欧州系銀行収益の7割を占める純金利収入(NII)は、純金利マージンが縮小し、圧力を受けている。低金利環境がどこまで続くかは定かではないが、アフターコロナを見据え、市場金利の急激な上昇変動リスク、銀行の純金利収入や銀行の将来のキャッシュフローの公正価値に悪影響を及ぼすリスクも高まっている。 かかる中、2016年4月、バーゼル銀行監督委員会は、IRRBBに関する新たな規制の枠組みを最終決定した。草案では、IRRBBに対する標準化された第1柱の資本賦課金(Pillar 1 capital charge)を設定しようとしたが、委員会のメンバーはこれに合意することができなかった。その代わりに、委員会は一連の標準的な公開情報を作成し、銀行は金利ショックシナリオの結果を純利息収入とEVE法の両方に基づいて計算して報告する義務を策定した。国際合意上の適用開始時期は2018年3月とされたが、その後、段階的な移行スケジュールが示されている。準備期間中に、利用者行動モデル化と金利リスク影響度計測 について、内部管理体制の整備・高度化を図ることが望まれている。本欄ではIRRBBとその関連規制をざっくり整理したい。 IRRBBとは 銀行のブックポジションに影響を与える金利の不利な動きから生じる、銀行の資本と収益に対する現在または将来のリスクを指す。 IRRBBの3要素 ギャップ・リスク:運用・調達の支払いタイミングのギャップ(典型的には、短期調達・長期運用)から生じるリスク、及び金融商品の金利改定のタイミングから生じるリスク ベーシス・リスク:期間(tenor)は類似していながら異なる金利指標を用いて価格が決定される金融商品における金利変更の影響(ヘッジと乖離が生じることにより、損益が変動するのリスク) オプションリスク:オプションデリバティブのポジションや、銀行の資産・負債・オフバランスシート項目に組み込まれたオプション要素から生じるもの 第2の柱の一環として、銀行はIRRBBのリスクを識別、測定、監視、管理するための独自の方法論とプロセスを開発することにより、IRRBBの資本と収益への影響を考慮することを期待している。EVEは、標準化された異常値テストにおいて銀行のIRRBBを測定するために使用されており、銀行

欧州規制 MiFID IIとEMIRの違い、ざっくり整理

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リーマンショックを経て欧州金融市場は大幅な規制改革を行ってきた。その代表的な規制が、金融商品市場指令(MiFID)と欧州市場インフラストラクチャー規制(EMIR)であろう。一方、常識ともいえるMiFID IIとEMIRだが、両者の違いを聞かれると、金融市場関係者でも答えにつまる場合が多いように感じる。本欄では、MiFIDとEMIRとは何か、両者の違いを(筆者自身の脳内整理とともに)ざっくり解説したい。 EMIRとは? EMIRは、監督機能の強化、可視性と透明性の向上、デリバティブ市場に関連する報告リスク全体の低減を目的として提案・施行された欧州規制である。EMIRの導入・制定は、欧州のデリバティブ市場内のすべての事業法人、金融法人、銀行、取引情報管理機関に適用される。 EMIRは、 3つの主要な目的( 報告、クリアリング、リスク軽減)に焦点を当てている が、 MiFID IIの適用範囲はOTCデリバティブに限定 されている。EMIRの清算義務は、FCとNFCにも適用され、どちらも公認CCPを通じてOTCデリバティブ取引の清算を行う必要がある。 EMIRの第9条によると、EMIRの主な目的は以下の通りである。 規制された取引執行と取引報告所への報告による安全性と透明性の向上 清算されない契約のリスク軽減基準によるカウンターパーティの信用リスクの低減 タイムリーな確認のための電子的手段によるオペレーショナル・リスクの軽減 事業法人、銀行、カウンターパーティは、規制のために指定されたそれぞれの取引報告機関に報告書を提出する必要がある。これらの報告には、取引所デリバティブ、OTCデリバティブ、グループ内取引、契約関連取引に関するあらゆる情報が含まれていなければならない。 現在、報告書の提出が義務付けられている事業体カテゴリは以下の通りである。 金融機関のカウンターパーティ(FC) 非金融カウンターパーティ(NFCs) TCEs 報告対象者は、取引の相手方である場合もあれば、第三者(CCPや取引プラットフォームなど)である場合もある。EMIR報告義務の唯一の例外は、BIS、ESCBメンバー、および公的債務やグループ内取引の管理に携わるその他の事業体である。 Reporting of OTC Derivatives Between FC and NFC- Entities Af