秒速で稼ぐという錯覚:統計が語る「秒」の危うさ
ツイッターなどでいわゆる「金融界隈」と呼ばれる方々の投稿を拝見するようになってから、少し気になることがあります。日々の相場を鋭く分析する方もいれば、短期売買の成果を誇る投稿も多く見られます。とりわけ、「デイトレードはリスクが少ない」「持ち越さないから安全」といった言葉を頻繁に目にするようになりました。確かに、オーバーナイトでポジションを保有しないという点では、翌日のニュースや金利変更といった外部ショックの影響を受けにくく、リスクが限定的に見えるかもしれません。しかし、実際の市場の動きや人間の心理を考えると、もう少し慎重に考える必要があります。SNS上には「デイトレードは安全」「秒速トレーダー」といった宣伝も見られますが、それは翌日にリスクを持ち越さないというだけであり、短期トレードには別の統計的なリスクが存在します。以下では、その「デイトレは安全なのか?」という前提について、少し掘り下げて考えてみたいと思います。 短期トレードのリスク構造:予測可能性の低下 時間軸が短くなるほど価格変動におけるノイズ比率が増大し、予測可能性は低下します。EUR/USDの年率ボラを日次から他の時間軸に換算する際には√Tが目安になりますが、超高頻度ではマイクロストラクチャー要因で単純な換算が崩れます。 投資期間 典型的1期間σ(EUR/USD) 取引コスト(片道bps) 情報比率の目安 1分 約0.02% 0.5–1.0 極めて低い(<0.1) 5分 約0.05% 0.5–1.0 低い(0.1–0.3) 1時間 約0.2% 0.5–1.0 やや低い(0.2–0.4) ...