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銀行ALMの要、FTPを整理

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ALMの観点で定量的に銀行全体の金利リスクと収益のバランスをマネジメントするには市場金利のイールドをそのまま使うというわけにはいかない。なぜなら、伝統的な銀行プロダクトの多くは、金利リスクに加え、信用リスクや流動性リスクに直面しているからだ。また、多くの商品には、前払いや引き出しのオプション性が埋め込まれている。 債券投資 において最適化を実現しても、銀行・金融機関全体として最適になっている保障はない。銀行はバランスシート上、債券ポートとは別に 預金・貸金ポート を持っている。具体的にはプライシングリスク、ベーシスリスク、流動性リスク、為替リスクなどを各行のバランスシートの性質を考慮したイールドが必要となる。この観点から銀行ALMでは古くから定量リスク管理指標としてFTP(Funds Transfer Pricing)が存在する。 FTPは顧客取引やマーケット取引など個々の取引が、その裏付けとなる資金調達・運用コストと比較して効率的に行われているかを分析するために用いられる。FTP によって、預金およびローンの収益性区分 (FTP レート、ファンドの原価、ネット利子収入 (NIM)、および正味利息収入 (NII) など) を構築および評価することにより、銀行の預金増加 (借入) および資金調達 (貸付) 事業単位のパフォーマンスが測定される。 FTPは新しい概念ではないが、金融危機後、銀行の調達コストの増加が商品に織り込まれていないことが明らかになり、再び注目されるようになった。 BISの 調査 (2011)では大手銀行、特に大規模なトレーディング事業を展開している銀行の多くが、個々の事業のバランスシートを把握しておらず、個々のトレーディングデスクの資金需要を把握することができていないことが浮き彫りとなり、その結果、トレーディングおよび投資銀行業務に必要な資金は、関連する全業務部門の純資金需要の合計に基づいて調達されていた。つまり、この方法は、本質的にトレーディング・ブックに与信枠を与えるものであり、事業活動に内在する流動性リスクを考慮するものではなかった。また、調査に参加した大規模なトレーディング事業を行う銀行は、保有するトレーディング資産の多くに不十分なヘアカットを適用していた。これらの銀行は、市場の混乱が起こる可能性や、市場の流動性がどの程度失われるかを明らか