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欧州金融の中心はアムステルダムに移るのか

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ブレグジット直後の2021年1月の月間取引量で 欧州株に関しては ロンドンがアムステルダムに負けた! 欧州株月間取引量(2021年1月) とのデータが注目を集めています。 これを受け、 欧州金融の覇権はロンドンからアムステルダムに移る!! ブレグジットでロンドン金融街が終焉を迎えた!! 的なコメントも散見します。 ・・・が、 個人的には現時点では 行き過ぎた観測 で、 アムステルダムに欧州金融のすべてが移る と考えるのは突拍子なさすぎると思います。 というのも、株だけならまだしも、その他の資産クラスも含めて考えると、人がいません。 在欧州トレーダーの肌感覚としても、 捌けなくなりそうで サステナブルでない です。 トレーダーの転籍も現実的ではありません。 一番の問題は雇用システム オランダの金融は ボーナスを給与の20%に制限する規則 (2015年制定)があります。 ボーナスは「固定報酬ではないすべての報酬」と厳格に定義づけられてるので逃げ道がありません。 これがロンドンのトレーダーがアムステルダムに転籍する道を閉ざしています。 ブレグジット後の金融センター争奪戦 この理由で、ブレグジットの移管先として、アムステルダムは外銀に大不人気でした。 結局、 移したのはRBSと、邦銀2行だけ 。 EBAの報告書(2018年)によると、オランダ金融で€1m以上の収入得ている人は37人。 フランス234人、ドイツ450人、英国3614人と比較すると 圧倒的に魅力がない街なのです。 フローの行方 1月の欧州株取引の大移動は、英国はEU離脱によって単一の金融免許制度から外れたことが原因です。 移行期間が終わるまでに英国がEUから規制水準が「同等」との認定を得られなかったため、 EUの投資家は在英の取引所やシステムでEU株の取引ができなくなりました。 そのため、急遽、アムステルダム、パリ、フランクフルトに移ったものです。 同等性評価が得られたら、再びロンドンに帰ってくる可能性もありますし、 得られない場合は、EUで内政化されることでしょう。 アムステルダムの将来性 アムステルダムが、本気でポストロンドンを狙うなら、 雇用システムを抜本的に見直す 必要があると思います。 トレーダーにとって、業績連動がないのは生きがいを奪われることと等しいです。 ひいては、金融街発展の原動力となると信じ...

人口・移民から考えるブレグジットの影響

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ブレグジット≒人の扱いが変わる 国内総生産(GDP) →減少する (人口ボーナス喪失問題) 働き手、消費者が増えなくなるのは、英経済成長にとって悪影響が最も大きいところかもしれません。 これまで英経済成長は移民増と比例関係にありました。 毎年20万人あった移民による人口増が減少に転じれば経済規模は頭打ちになると見込まれます。 データ:Statista/英政府 人口(英国民数) ブレグジットすると、英国籍取得者数(2重国籍)が増えると考えられます。 EU市民権で英市民権を代替できなくなったことで、英国に居住するEU市民は英市民権の確保に動くはずです。(国民と永住者では権利に差がある→英国民になるインセンティブが働く) EU市民の英国籍申請には5年居住が必要(国民投票の年から住んでるEU市民は、今年、国籍申請ができる)ですが、合理的であるならば5年間すんでるEU市民の殆どは英国籍を取得すると思います(ヨーロッパでは2重国籍は当然の権利、生存権として認められている)。 小生の知人でも英パスポート取得者が増えました。 現在、英国に住んでいるEU市民は200万人程度なので、100万人規模で親EU英国民が増えてもおかしくありません。 そうすると、当然選挙にも影響がでてきます(リベラルに傾く)。 データ:Statista/英政府 以上、ご参考まで!

財政政策が通貨に与える影響を再確認

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ツイッター等で個人FX投資家界隈の相場コメントを見ていると、財政拡大をベースマネー拡大と勘違いする向きがある気がします。 特に「イエレン財務長官就任でドル安」というロジックを語るコメントは多かったです が・・・このロジック、正しいですか? 少なくとも、このロジックは、筆者の考える 為替理論からは外れています 。 勘違いしてはいけないこと イエレン氏が財務長官に就任すると、彼女が担当するのは 金融政策ではなく財政政策 です。 FRB 議長ならば、金利やベースマネー調整による為替操作が可能かもしれませんが、財務長官が為替操作したい場合はそう簡単にはいきません。 財務長官が取り得るツールは為替安定化基金の運用も含めた ①為替介入 か、 ②為替政策報告書を用いたけん制 くらいです。 正直、トランプ流の政策批判の上に成立したバイデン政権がこの2つに手を付けるとは考えづらいです。 では、財政出動によってドル安に誘導するというロジックはどうでしょうか? 筆者の見解としては、このロジックはぼんやりと間違っていると思います。 財政出動はそもそもドル高要因 財政政策は貨幣乗数の分子に影響を与えるものであって、その分母を増加させる政策ではありません。 IS-LM曲線的にも、ケインズ的財政政策は国民所得の浮揚、金利高⇒ドル高に作用するとみられてもおかしくありません。 ドル安に振れるのは イエレンが思ったほどの 手腕を発揮できなかった場合 に起こり得ることでしょう。 財務長官就任前に彼女の手腕を期待しつつドル安に賭けるというのは、どうも辻褄があいません。 ドル安に振れたのがバイデン勝利と同タイミングであったため、後付け的にイエレン財務長官就任でドル安に振れると解釈することは危ういように思います。 よって、ここに警鐘をならしておきます。 以上、ご参考まで! とある在英トレーダーTimのフォローはこちら Follow @TimCIIA   面白かったと思った方はツイッターの「いいね」ボタンお願いします。

スコットランドが独立したら英国債はどうなる

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英国債はスプリットされるのか? 英政府の見解では、あらゆる状況においても英国政府が発行した債務は、英政府が返済義務を負うとされてます。 つまり、スコットランドが独立して英国の債務の一部を引き受けることになっても、負債がスコットランドに移転されることはないようです。 スコットランドが引き受ける返済義務は英国政府に対して発生するようです。 この引き受け額を巡っては、英・スコットランド間で合意されるべきですが、2014年当時の議論を振り返ってみると ⇒ 通貨同盟の前提で、スコットランドは英国政府債務の一部を引き受け ⇒ 正確な継承金額と返済条件は交渉次第 ⇒ 通貨同盟でない場合、スコットランドは英国債務のシェア引き受けを拒否する 等の話が出てました。 離脱を決めてから考えるスタンスはブレグジットと同じですね😅 とある在英トレーダーTimのフォローはこちら Follow @TimCIIA   面白かったと思った方はツイッターの「いいね」ボタンお願いします。

金利上昇、先物ディスカウント要因なのに通貨高材料になるのなんで?

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突然ですが  問題です! 金利が上昇するとき、 為替先物のディスカウントが深くなる のに 通貨高の要因になる とされてます🤔 ・・・なんでか、説明出来ますか? ・・・ ・・・ 金利分析は為替価格決定理論の一丁目一番地🗻 避けては通れません。 しっかりイメージを持っておきたいものです。 解説 この質問、ドル円を前提に一つ一つに分解すれば 質問① 米金利が高くなると為替スポットへの影響はどうなる? ⇒ ドル高に動く 質問② では、先物相場は? ⇒  ドル円のディスカウントが大きくなる と、すんなり答えが返ってくると思います。 が、 なんでディスカウントなのに通貨高要因になるの? と聞かれると ・・・こんがらがる人がおおいです?🥺 経験上、市場実務に携わる人でも、先物にマイナスに働く米利上げがドル円上昇要因となる ロジックを説明出来きる人は少ない です。 大体、「そういうもの」と返ってくると思います😅 この質問、過去に筆者も何回も聞かれたことあるので、(定性的に考えると)初心者にはわかりづらいポイントなんだと思います。 しかも、本やサイトを見てもキチンと説明してるものが(意外と)見当たりません。 なので、本欄で説明します🧐 金利平価の式を書こう この説明、言葉でするのは至難の技です。 なので、簡単な数式を書きます。 まず、一般的な(カバー付き)金利平価の式を見てみましょう。 (金利平価自体を理解したい方は ウィキ 参照) シンプルに先物レートだけをフォーカスするために、先物レートを左辺に移項すると となります。 分母にある米金利が上昇するとドル円の先物レートは下がることが確認できました。(ディスカウントが深くなる) ではスポット相場の動きはどうなるか? 今度は、スポットレートだけを左辺に移項してみます。 今度は、 米金利は分子にくる ので、米国の金利上昇がドル円スポットの上昇要因となりました。 おわり! これ以上の説明は不要です 式を変形するとスッキリしますね とある在英トレーダーTimのフォローはこちら Follow @TimCIIA   面白かったと思った方は「いいね」ボタンお願いします。 🙌

為替トレーダーのための現代ファイナンス

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~大統領選挙スペシャル ~ 為替トレーダーのための現代ファイナンス 大統領選挙のように大きなイベントの後には ドルや株式市場の方向感がつきやすい ものです。 トレーダーなら、動意づく相場では、ポジションを持っておきたいですが、何の通貨ペア(インデックス)を持っておくべきか悩むところです。 しかも、イベント相場の難しいところは、 チャートを眺めていても結論が出ない ところです。 ( チャートが得意な人ほど、難しい相場かも・・・) 大統領交代のように、大々的な政策変更が見込まれる局面では、ファンダメンタルズが主因となり、 短期のテクニカルは通用しない と考えた方がいいかもしれません。 かといって、ファンダメンタルズ分析を各通貨ペア毎に実施した上で、ポジションを取るとなると時間もかかってしまうので、機を逸してしまうリスクがあります。 うーん、何かいい案はないものでしょうか・・・ 特別、思い入れのある通貨(相場感)があれば別ですが、 そうでない場合は、いったん短期の上下動から離れて考えてみてはどうでしょうか? 政局等の地殻変動がある場合には、中長期的な観点に立ち返る必要があります。 チャートのジグザグではなく、 ポートフォリオ理論 を参考に中長期的な ポジション構成を考えてみる のも手です。 ポートフォリオ理論の 効率的フロンティア分析 によって、複数の通貨やインデックス等、値動きの異なるものを組み合わせれば、ポートフォリオ全体として、 ブレを相殺(リスクを軽減)させて、効率的に収益化することも可能です 。(ポートフォリオ効果) 本欄では、誰でもわかるを目標に ポートフォリオ理論に基づいたポジション構成手法 をまとめます。 効率的フロンティアとは? 効率的フロンティアとは、ポートフォリオにおける資産配分の中で、 投資家にとって最も有利な選択肢の集合 です。 この、ポートフォリオ理論を理解するには、分散投資の意義を言い表す米国の格言「Don't put all your eggs in one basket(すべての卵を一つのカゴに盛るな)」をイメージすればわかりやすいと思います。 卵をいくつかのカゴに分散することでリスクが軽減できるように、複数の通貨・インデックスに分散すると、ポートフォリオのリスク(変動)も軽減できます。 しかも、単純に個別の通貨、インデックスのば...

ロンドンでトレーダーになるために必要な試験てあるの?

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今回は、英国でトレーダー就職をする場合に必要なプロセス・試験について記事にします。 (相場の話ではないので、興味のない方は、つまらないかもしれません) まず、当たり前ですが、ロンドン金融街でトレーダーとして勤務するには、どこかの銀行から 採用通知をゲットする必要があります。 当然、学歴、職歴、面接での印象等から総合的に判断されます。 無事、面接等をパスし、採用通知を受けた後は、金融庁登録関連で2つ待ち受けています。 ①金融庁Approved Person登録と②CISI試験です。 まず、①金融庁Approved Person登録は、具体的には過去の経歴を金融庁に提出し、審査を受けます。 新米トレーダーだと学歴くらいしか見られませんが、GMクラスでの登録は、トレーダー歴が重要視されます。(社内異動を繰り返した駐在員等で、一貫性のない職歴の場合は、認可が下りないこともあります) トレーダー業務を遂行するに値する、と承認が下りた後は、②CISI試験を受験する必要があります。 具体的には英金融庁FCA (Financial Conduct Authority) が定める CISIの試験科目(法令・市場専門科目等)に合格する必要 があります。(受験科目は職務・銀行によってばらつきがあります) 日本の外務員試験のようなもので、難しい試験ではないのですが、厄介なのは 受験の回数制限がある ところです。 「数うちゃ当たる」戦法を封じ込め、金融知識がある人材のみに金融業認可を与えることを目的としているようです。 CISIのルール上、受験可能回数が6回に設定されいる上、不合格となった場合、次の受験までは、数か月待たないといけないようです。 というより、雇用主側が独自ルールを設定してることが殆どで、6回も受験できません。 この試験に不合格になると、どの銀行でも不適合とみなされることが多く、 3回不合格となった場合には解雇される ことが一般的です。 新人にとっては、頭の良し悪しを判断される材料となるので、なめてかかるのは得策ではありません。 しっかりと勉強すれば、合格は難しくはないのですが、勉強時間を取らずに受験してしまうことだけは避けた方がいいです。 個人的な肌感覚としては、週末を2回つぶせば合格ラインに立つことができるレベルの試験だと思います。 非英語圏から来た人の場合 試験の難易度が...